選書紹介『ケーキの切れない非行少年たち』/宮口幸治

本書の内容

本書は精神科医である宮口幸治先生が、これまでの医療現場, 矯正施設等での臨床経験のもと, 発達障害や知的障害を持つ子, 不登校や被虐待, 思春期の子たち, 非行を犯してしまった子たちには一体どんな特徴があるのか, またどのように支援していけばいいのか, 同じようなリスクがある子にどんな教育ができるのか, といったことがテーマとして書かれています。


例えば, すぐにカッとなる, 自分の気持ちを上手く伝えられない, 物忘れが多い, 集中力が無い, 嘘をつく, 自尊感情が低い等といった子どもたちをどのように理解し, どのように関わっていけばいいのでしょうか?


こうした子どもたちへの理解の仕方や配慮, 対応について様々な事例とともに紹介されています。

以下本書の目次を確認してみます。

目次                                                            

第1章:「反省以前」の子どもたち

第2章:「僕はやさしい人間です」と答える殺人少年

第3章:非行少年に共通する特徴

第4章:気づかれない子どもたち

第5章:忘れられた人々

第6章:褒めるだけでは問題は解決しない

第7章:ではどうするか? 1日5分で日本を変える

我々が学習塾という立場であることから, 本コラムでは「教育現場」における関わり方について書かれていた第6章を中心に紹介してみたいと思います。


ですがこの6章も他の章との関連で書かれているので, まずは第1章~5章について簡単にご紹介したいと思います。

第1章~5章で共通して述べられているのは, 所謂, 健常者と言われる人と知的障害, 発達障害と呼ばれる人とでは見ている世界, 解釈の仕方が全く異なるということです。

健常者(例えば見たり聞いたり想像したりする力がある程度備わっている人)が普通で正しいとされる世の中では, 彼らは異常者として扱われ, それがまた別の苦しみを生み出します(非行もその一つとされています)。

筆者は, そうした経験を幼少期から経験することで, 最終的には大人になり社会に出てからも, 周囲からの理解を得られずに苦しみ, 時に犯罪行為にも手を染めてしまうのだと述べています(だからこそ幼少期からの支援が不可欠だと本書で度々主張されており, そうした子どもたちが確かに存在していること, そして彼らに対する捉え方, 支援のあり方の重要性と問題点等々が綴られています)。

彼らが味わう苦しみについては, 以下の順番で筆者は紹介をしています。

1次障害:障害自体によるもの

2次障害:周囲から理解されず, 学校などで適切な支援が受けられなかったものによるもの

3次障害:非行化して矯正施設に入っても理解されず, 厳しい指導を受け一層悪化する

4次障害:社会に出てからもさらに理解されず, 偏見もあり, 仕事が続かず再非行に繋がる

『ケーキの切れない非行少年たち』, 宮口幸治, 新潮新書, 2019, p.98.



このような流れの中で, 第6章では学校現場にまずはスポットを当て, 学校教育でよく見られる子どもたちへの支援のあり方は本当に有効なのか, また支援方法の1つとして「褒めること」が重視され過ぎているのではないかという疑問のもと論が展開され, 最終的にはその他の周辺領域にも問題点があると指摘しています。


学校教育に限らず, 我々学習塾や家庭教育, 広く教育に携わる人は読んで損はない内容かと思います。

詳しくは本書を直接読んでいただければと思いますが第6章の中心的主張をご紹介してみたいと思います。

第6章:褒めるだけでは問題は解決しない

筆者は学校コンサルテーションという形で, 定期的に先生方と事例検討や支援方法についてのコミュニケーションをとっています。
そこでは, ある事例について先生同士で話し合い, 解決案をグループで出していくというものなのですが, ここでよくでる解決策が「その子の良い所を見つけて褒める」なのだそうです。

この背景には, 問題行動ばかり起こしている子はどうしても悪い面にばかり注目されがちなので, 良い面を見つけて小さな事でもきちんと褒めることが大切, という発想があるみたいなのです。

もちろん筆者も「褒めること」の良さについては一定の意義を認めています。

しかし同時に, 「褒めるだけ」では本当の解決には繋がらないと言います。

なぜなら「褒めること」は, 最初は「喜ぶ」「嬉しくなる」という点で効果があったとしても、徐々にそれも薄れていってしまうからです。

また「褒める」と同じようによくでてくる解決策が「話を聴いてあげる」だそうです。

これも子どもの気持ちを受け止め落ち着かせる, という点では効果はあっても根本的な問題解決にはつながらないと言います。

つまり長い目でみると, 「褒める」・「話を聴く」という行為は, その場しのぎで問題を先送りにしているだけだと筆者は述べています。

学校現場では子どもたちの特性を伸ばすための具体的な対策を持っていないこと, さらに学校以外にも医療分野, 心理分野, 司法分野, あらゆる関係領域においても, 原因についての分析はできても, 「どうしたらいいのか」 ということについてはあまり明確な指針がないのが実情だとし、問題点として指摘しています。

例えば, 少年鑑別所では鑑別結果が届くのですが、そこにはどの子にも共通して「自尊感情が低い」「感情のコントロールが苦手」「対人関係が苦手」「基礎学力がない」といったことが書かれているそうです。
原因自体も抽象的ですが, それ以上にそれをどうやって伸ばすのかということについては, 残念ながらほとんど書かれていないそうです。


ではどうすればいいのか。


ここで第6章は終わりになり, 続きは第7章に書かれています。

この「どうすればいいのか」という点がまさに支援をする上では大切ですが、続きが気になる方、どんな苦しみを抱えて生きている子たちが世の中に存在しているのか知りたい方、また支援のあり方を考えたい方はぜひ当塾にも本書が置いてありますので, お手に取って読んでみてください!

感想

本書で登場する子どもたちは, 基本的に矯正施設にいる子たちについてですが, そうでなくとも大なり小なり似たような生きづらさを抱えている子どもや大人の方はたくさんいるでしょう。

当塾においても日々試行錯誤を繰り返しながらその子に合った支援を目指して活動しています。
たとえそう簡単に変わらなかったとしても諦めたらそこで試合終了ですから, 最後までその子に何が必要なのか, 時に外から観察し, 時に本人から教えてもらいながら, この絶え間ない支援の中で「全体」と「部分」の激しくも美しい往還を通じて, できる所から一歩ずつ, それぞれが同じ方向を向いて関わりつづけていけたらなと思っています。

でもやっぱり粘り強く「バランス」をとっていくことはほんとに大事ですよね。

その子にとってのバランスは何なのか。それを知っているのは他でもなくその子なんだろうなと思います。
もちろん意識的には分かっていない場合がほとんどかもしれませんが。

教わろうとした時に初めて学びの一歩がスタートするんだなと改めて思う, 今の気分です。(笑)



コラム遅くなってごめんなさい。吉田さま・・・・。





紹介者:熊谷


Co-learning park DEKOboko は、「勉強面も生活面も両方大切に」をモットーにした、中高生~社会人に「学び」の場を提供する次世代型の学習塾です。

中高生を対象とした授業の提供のみならず、「不登校」生のための場の提供、浪人生・大学生・社会人の方に向けた「自習室」の提供、保護者の方に向けた教育相談支援・カウンセリングの提供を行います。

一人ひとりの成長を後押しできるような「居場所」や「体験」を提供したいと思っております。



是非お気軽にお問い合わせください。


アクセス:西武新宿線「新所沢駅」東口より徒歩0分。

HP:学習塾 Co-learning park DEKOboko (コルパ・デコボコ) ― 新所沢

Instagram:学習塾 Co-learning park DEKOboko(@colpa1212) • Instagram写真と動画

Twitter:Co-learning park DEKOboko@12/12オープン!!(@colpa1212)さん / Twitter

LINE:コラーニング・パーク ーデコボコー | LINE 公式アカウント