選書紹介『1984』/ ジョージ・オーウェル
今日のデコボコ選書は, ジョージ・オーウェル著「1984」です。
本書のジャンルは,「ディストピアSF小説」になります。
欧米ではかなり評価が高く, 現代でも様々な分野に影響を与えている作品です。
どんな本なのか
本書の舞台は第三次世界大戦後の架空の超大国オセアニア。
オセアニアでは, 思想・言語・結婚など生活のすべてが国家によって統制され, 国民のあらゆる言動・行動は町中のいたるところにあるマイク・カメラなどによって監視されています。
主人公の「ウィンストン・スミス」は公務員として歴史の改ざん作業を行っていましたが, あるきっかけから徐々に国家に不信を抱くようになっていきます。そして厳しい監視の目を掻い潜り, オセアニアでは禁じられている行為に手を染め始めます。
しかし, それらの行為が思想警察(国に反逆していると思われる人を取り締まる組織)に見つかって捕らえられてしまい, , ,
あらすじを読んでわかるように, 本書では「超監視社会」が描かれています。
監視・管理の方法としてオセアニアが用いる手段は, 主に3つほどあります。
- 町中に設置されている「テレスクリーン」と呼ばれる盗聴器, 監視カメラ
- 二分間憎悪(国民に共通の敵を作り, 毎日それに向かって憎悪を向けるキャンペーン)
- ニュースピーク(以下の章で詳しく記載)
この巧妙な手段のおかげでオセアニアの人々は基本的には国家に何の疑問も持たないで生活しています。
個人的にはニュースピークという手法が気になったので, 以下の章で詳しく書いていきたいと思います。
監視社会恐ろしい, , ,
ニュースピークnewspeak(=新語法)
本書の中にはニュースピークという言語が存在します。
ニュースピークとはオセアニアが英語をもとに作成を進めている新しい言語で, 通常の英語から文法や語彙を削減してかなり単純にしたものです。
しかしなぜオセアニアはもともと英語があるにも関わらず, わざわざニュースピークという新たな言語を作成しているのでしょうか。
それは語法を統制することによって, ①国家の世界観や精神的習慣を国民に伝達する目的と②ありとあらゆる他の思考様式を完全に排除する目的があります。
あまりピンとこないので, 例えば以下のような語法が用いられています。
・オールドスピーク(ニュースピークが作成される前の言語, つまり通常の英語)
「free」:自由, 空いている, 用事のない, 含まれていない, 開放するetc
→ 幅広い意味があり, 例えば「政治的に自由な」や「知的自由」という使い方ができる。
・ニュースピーク
「free」:自由, 含まない
→ニュースピークにおいて語の意味は厳しく限定されており, 例えば「この犬はシラミから自由だ, シラミを含まない」「この畑は雑草から自由だ, 雑草を含まない」といった言及しかできない。「政治的に自由な」と言うことは不可能であり概念すら存在していない。
上記の語法はまだ一部で,本書の最後の方のページには「付録 ニュースピークの諸原理」という章があり詳しく語法が記載されています。
国民を統制するために言語を変えるという発想はとても面白いですよね(恐ろしいことですが, , )。
言語について
ニュースピークは, 語法・文法を操作することによって国民の思想を制限するという恐ろしいものでした。
言語を操作するという点では, 以前コラムで紹介した「残像に口紅を」とも少し重なる部分があります。この作品では言語がどんどん消滅していき最終的には何もなくなってしまいました。
これらの作品はフィクションですが, 現実世界でも言語的相対論(サピア=ウォーフ仮説)というのが存在します。
この説は「思考する際に言語が使われるなら,思考はその言語の影響を受ける」といった仮説です。
世界にはいろんな言語があり, おおよそどの言語も互いに翻訳できますが, なかには翻訳することが難しいその言語特有の言葉もあります。
日本語でいうと「わびさび」「もったいない」「切ない」あたりでしょうか。外国人がこれらの言葉をすぐ理解し, これらについて思考することは難しいでしょう。
また, そもそも言語がなければ私たちは何も考えることができません。
普段何気なく使っている言語ですが, よく考えるととても重要な機能が沢山ありますね。
自分で言語を操作する
本書で言語は国民の思想統制のために使われていました。
上記の章では言語によって思考に影響が出ること・言語がなければ思考できないことがわかりました。
言葉で色んな表現をしてみることは大切なことですが, あえて自分で使う言葉を操作してみるのもいいかもしれません。
例えば,
「できない」の前には「今は」を必ずつける。
苦しい体験,辛い体験はすべて過去形にして表現する。
ネガティブな言葉を使っていいのは一日1回。
などなど,色んなやり方が考えられます。
みなさんも, 普段使っている言葉を少し改造してみてはいかがでしょうか。
紹介者:尾崎
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