選書紹介『残像に口紅を』/ 筒井康隆
今日のデコボコ選書は、筒井康隆氏の「残像に口紅を」という小説です。
この本の魅力は「文字がひとつずつ消えていく」という点にあります。
基本的に文字のみで構成される小説から文字を消していくなんて、一体最後はどうなるのか気になりますよね。
消えていく文字 ~コラムから「あ」と「ふ」を消せば~
冒頭に述べた通りこの本のなかでは文字が消えていきます。つまり「あ」とか「ふ」などの文字が消えていきます。
そしてその文字が使われている固有名詞なども、本の中の世界で消えていきます。
消えたものに関しては当然話すことはできないですし、記憶からも徐々に消される仕組みになっています。
試しにこのコラムでも消してみましょう。
もうこのコラムの世界では、夏によく食べる冷たくておいしいデザートはないですし、緑色のコンビニも存在しません。
消えたものを探していく ~コラムから「あ」と「ふ」と「す」と「ぜ」を消せば~
本の物語は一言で説明してしまえば、ある小説家の日常が描かれている。この小説家が生活する中でどんどんと文字が消えていく。
本のなかでは、章ごとに【「」と「」を消せば】といったように書かれているので消えた文字は分かるが、小説の中で実際に何が消えたのかはわからないので、上の章の最後の行のようにヒントをもとに自分で消えたものを探さないとなりません。
序盤は何が消えたのだろうと消えたものを想像しながら読むのもなかなか楽しいが、後半になると疲れる…。
文字が消えることによって文が変化していく
~コラムから「あ」と「ふ」と「す」と「ぜ」と「し」と「ぱ」を消せば~
文字が消えるにしたがって、本の中の文体も変わっていく。
このコラムでは、もう文末によく置かれる柔らかいイメージを与える文字がひとつ消えているので、なんだかちょっと堅い文になっている。そろそろコラムも書きにくくなってきた。読み手のみなさんも読みにくいと思う。
よく使う文字が消えるとかなり不便だが、あまり使わない文字が消えてもそんなに問題はない。
この本でも序盤から中盤にかけては、意外と違和感なく読めるようになっている。だが後半になってくると読みにくい文になっていく。
消えた文字たちを呼び戻す
本書を真似てコラムでも少しだけ文字を消してみましたが、これはムズすぎる。
これ以上書けないなとおもったので消えた文字を呼び戻しました(笑)。
私のコラムはせいぜい1000字から2000字程度ですが、おそらく本書は10万字くらいあるので、文字を消しつつ執筆していくのは狂気を感じますね。
私のコラムではせいぜい6文字しか消えていませんが、本書では最終的に50音が消えます。
さっきも言いましたが、何が消えたのかを考えながら読むのは面白いですし、少しずつ変化する文体も本書の魅力です。
小説だと、特にミステリーであれば誰が犯人なのか、どんなトリックがあるのかと物語の内容に焦点があてたものが多いと思います。というかほとんどの小説は内容で勝負しています。
そうした中で「文字が消えていく」という構造を工夫した小説はかなり珍しいものだと思うので、興味のある方はぜひお読みください。
ああ、やっぱり文字があるって素晴らしい。
紹介者:尾崎
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