選書紹介『悪口ってなんだろう』/ 和泉悠

今週のでこぼこ選書は

『悪口ってなんだろう』/ 和泉悠

本書の概要

本書はタイトル通り、「悪口とは何か」について考察を深めた1冊です。

「悪口はどうして悪いのか」・「どこからどこまでが悪口なのか」・「悪口はどうして面白いのか」といった3つの観点から、「悪口」への理解を深めていく構成となっています。

「悪口」の定義として、「人を傷つける言葉」「悪意を持って人を攻撃する言葉」といったものが挙げられそうですが、著者の和泉さんはそうではない仕方で、そしてどこか腑に落ちる仕方で「悪口」の定義づけを行います。

非常に精緻な言語学的分析を、あくまで平易な言葉で軽快に、そしてユーモアたっぷりに書き進めていく手さばきは圧巻です。巻末注も充実していて読み応えがあります。

著者の和泉悠さん、これまで存じ上げなかったのですが、今回本書を読んでフアンになりました。

つい最近出版された本ですので、詳細な内容はぜひ皆さんの目で確かめていただきたいのですが、本書を手に取ったきっかけ、そして私自身の関心事を取りまとめて、今回のコラムを終えたいと思います。

本書との出会い

私が本書を読むに至ったのは、「悪口はどうして面白いのか」と銘打たれた章に惹かれたからでした。

「悪口」的なものって、時に最高のユーモアになり得ると思います。

たとえば人の集まる飲み会などで、誰かの「悪口」で大いに盛り上がった経験がある方は多いのではないでしょうか。

また私はお笑いが好きなのですが、なかでも時に「悪口」的なものを含んでしまうような、ブラックなユーモアが好きだったりします。

(そして弊社代表の放つユーモアにも時に近しいものがあります。恐ろしい男です。ほんとに彼は。あっぱれ!)

それゆえに、私自身は必ずしも「悪口」がキライではありません(「陰口」はゴミだと思ってます(ΦωΦ))。

しかしこうした嗜好を持ちつつも、「ユーモアとして許容される『悪口』とそうでない『悪口』の線引きはいったいどこにあるのか」・「ブラックなユーモアの意義・効用とは何か」などといった問題については、自分のなかで未だ整理がついておらず、モヤモヤした感じが続いています。

「悪口」はなぜ面白いのか、そして「悪口」と「笑い」の関係性について、学問的な観点から俯瞰的に論じてくれている本書は、こうした私自身の関心や疑問について何かヒントをくれるのではないか。目次をチラッと見た時のそんな直観から、この本を購入した次第です。

こうしたことに関連して、今回は和泉さんの主張する「悪口」と「笑い」の活用法、そしてその意義や効用について、少しだけ見てみたいと思います。

「悪口」と「笑い」の意義・効用

和泉さんは「悪口」と「笑い」の意義・効用に関して、自分よりも立場が強く、「何やら大物ぶりそうな人」=「権力を振りかざしそうな人」に「悪口」をぶつけ、面白おかしく「嘲笑う」ことによって、両者の関係性をフラットなものに近づけることができると語っています。

ややネタバレになってしまうのですが、和泉さんの主張は一貫して「すべての人間は等しく尊厳を持っており、同等のランクに位置する存在である。であるからこそ、存在自体の序列化=ランクづけを図るべきではない。」といった思想的立場から発されています。

だからこそ、何やら大物ぶってそうで、自分よりも権力を持っていそうな人々に対しては、積極的に「悪口」をぶつけて「嘲笑う」ことによって、我々は本来「同等な存在」であると伝え、頭を冷やしてもらう。そのことが、両者のランクを縮めていくために重要だ、というのが和泉さんの主張とそのロジックです。

(ランクを縮める意義は、「個々人の尊厳を守るため」という理由に加えて、「コミュニティを維持するため」という理由もあるようです。詳しくはぜひ本書迄。)

たしかにどんなに力を持った権力者であっても、「悪口」と「笑い」を経ることで、その存在との距離が縮まる感じはあるような…?

いうなれば「悪口」と「笑い」が、強者に対する一つの「抵抗」の(場合によっては「友好」の)手段になるわけですね。

たとえば、芸人の爆笑問題がやっているような「風刺的」な漫才は、こうした「悪口」と「笑い」の効用を体現しているのかも?

また昨年のM1グランプリで優勝したウエストランドの漫才は、一見ひ弱そうな男性二人が(すみません)、YouTuberやファッションモデルなど、世間的にどこか大物感があるように見える人々(すみません)をやり玉にあげて「悪口」をぶつける、まさに「弱者」による「強者」への「抵抗」として見ることもできるかもしれません。

ただウエストランドの場合は「悪口」の活用というよりも、ルサンチマンの暴発のようにも見えますが…ルサンチマンにも使いどころがあるという話なのでしょうか、はたまた。

突然、ルサンチマンの扱い方という難題にぶつかりました…「ネタの分析をする痛いお笑いファン」と井口に罵られそうでもありますし、この辺りでやめておきましょう。


今年ハマったウエストランドのパワー漫才

おわりに

まとまりがつかなくなってきましたので、本日はこの辺りにさせていただきます。

自身も本書の教え(?)に倣い、この際代表に「軽口」の一つでも叩いてやろうかと思ったのですが、特に言うことがなかったのでやめました。

言語や哲学に関心のある方、そして「悪口」が好きな方はもちろん、ぜひ嫌いな方にも読んでみてほしい1冊です。当塾にも置いておきますので、気になった方はお手に取ってみてください。

ちなみに私は本書を読了した勢いで、昨年出版された和泉さんの著作である『悪い言語哲学入門』も購入してしまいました。本書よりもやや分厚め。こちらも読むのが楽しみです。



最後に余談ではありますが、本書も含まれている「ちくまプリマ―新書」シリーズ、読み易さと内容の充実度がマジすごいので、国語の指導を行う端くれとして、中高生の皆さんにおススメしたいです。それではまた。





紹介者:吉田


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