選書紹介『ハーモニー』/ 伊藤計劃

今日のデコボコ選書は, 伊藤計劃(いとうけいかく)さんの『ハーモニー』です。

私はわりとSF作品が好きなので色んな作品を読んできましたが, なかでも本書は衝撃を受けた作品です。
伊藤計劃さんは残念ながら若くして亡くなられており, 3つの作品しか残っていませんがどの作品もSF界のなかで非常に評価が高いです。私も国内SFのなかでは最高傑作だと思っています。

この作品には哲学的な要素が沢山含まれていて, 特に哲学が好きな方にお勧めな作品と言えます。

あらすじ

本書の舞台となる近未来の世界では「大災禍(核戦争と未知のウィルスの蔓延により多くの人が亡くなった出来事)」をきっかけに人類の価値観のパラダイムシフトが起こり, その結果として医療技術が急速に発展, 寿命以外で人がほとんど死ぬことのない健康・幸福な社会が実現します。

一見すれば怪我や病気で死ぬことのない社会は理想郷のように感じますが, 主人公らの少女3人はその社会に対して疑問を持ち, 自殺することを決意します。しかし, 1人を除いて自殺は失敗に終わってしまいます。

それから13年後, 大人になった主人公は海外で仕事をしていましたが, とあるきっかけで日本に帰国することとなります。そこで全世界の6582人が同時に自殺するという奇妙な事件が起き, , ,

すべての人が健康な社会でなぜ自殺をするのか

なぜ主人公たちは自殺を決意したのでしょうか。
それは主人公たちが行き過ぎた社会の価値観に違和感を抱いたからです。

本書の世界のなかでは健康であることが義務となり, 一定の年齢を超えると体に「WatchMe」と呼ばれる機械をインストールし常に体をモニタリングすることで, 病気を早期発見・早期治療することが可能になっています。
また町中の地面は転んでも怪我をしないような柔らかい材質になっていたり, 転ぶと体を支えてくれる機械があったり, 車はすべて自動運転となり交通事故はほぼ起きなくなっています。

この世界では「個人」は社会の大切なリソースであり, 常に健康を維持することが求められ, 自分を傷つけることは「罪=悪」になるのです。

病気や怪我がなく健康であるということは素晴らしいですが, それが義務的になるとなんだか窮屈な気がしてしまいます。


我々の世界でもコロナウィルスが流行った結果, 街中のほぼすべての人がマスクをし, 至るところに消毒液と検温器がありました。人々の健康を守るという意識は素晴らしいものだと思う一方で, どこか息苦しい思いをしていた人もいるのではないでしょうか。
こうした例から見ても「人々は【常に】健康でなければならない」という価値観が絶対的に「正しい」というわけではないということがわかると思います。

この章の最後に, 作中で印象に残っている一節を載せておきます。
「どこまでも親切で, どこまでも他者を思いやって, 挙句の果てにこのわたしにすら思いやりを持て親切であれと急きたてるこのセカイ。そんな時代と空間に参加させられるのはまっぴらだ」

主人公たちは死なないことを強いられることによって自由が奪われていく社会への反抗として死を選んだのでした。皮肉ですね。

寿命以外で死なない世界は幸福か?

本書の設定では病気や怪我で死ぬことがほとんどない社会が実現されていました。
健康であるということを常に求められる(強いられる?)社会は果たして幸福であると言えるのでしょうか。

私たち人間は基本的には健康であることを目指しており, 身体の健康が幸福感に大きな影響を及ぼすことも理解できます。
しかし, 時には健康を害するようなことを楽しんでいる部分もあり, それが幸福感に影響していることもあります。例えば食事について考えてみると, 困ったことに健康に悪いものはおいしくなっています(二郎とか, 二郎とか, 二郎とか, )。もし健康に悪い食べ物がすべて制限されるとしたら幸福感は下がってしまうのではないでしょうか。

食事に限らず, ほかにも「制限すると健康問題や怪我はゼロにできるがその代わりに『楽しみ』が減ってしまう」みたいなことって世の中に沢山あると思います。

個人的には自己責任の範囲で何事もほどほどにバランスよくやっていくのがいいと思っています。
こういった問題には明確な答えはないので他の人と議論をしたりすると面白いかもしれません。

話は変わりますが, 著者の伊藤計劃氏は2001年から亡くなる2009年までユーイング肉腫という悪性腫瘍に苦しめられていました。
意図的なのかどうなのかはわかりませんが, 闘病していた伊藤計劃さんが自分の作品で病気のない世界を描いていて, それをディストピアとしているのは, すごく印象的です。自身の死を常に意識していた伊藤計劃さんだからこそ描けた作品なのかもしれません。

本書『ハーモニー』は当塾に置いてあるので, 哲学したい方は是非手に取ってみてください。




紹介者:尾崎

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