選書紹介『非認知能力』/ 小塩真司編著

今日のデコボコ選書は, 「非認知能力」という本です。

私たちの塾では,認知能力(学力など)だけでなく, 非認知能力も重視しながら日々子どもたちと向き合っています。

「非認知能力」という用語は教育現場などで近年よく聞く言葉だと思いますが, どういった意味なのかよくわからない方もいると思います。そこで今回は非認知能力とはいったい何なのか, 本書を参考にして深堀していきたいと思います。

非認知能力とは何か? 

はじめに認知能力とは, 本書によれば知能検査で測定されるような能力, つまり特定の課題をできるだけ早くあるいは多く、または正確に回答するといった能力のことを指します。そのため学力なども認知能力の1つです。

それに対して非認知能力とは, 「意欲や長期的計画を立てる能力・他人との共同に必要な社会的・感情的制御」などを指します。

私なりに認知能力と非認知能力を表現するとすれば「物事を実行するための能力」と「豊かに生きるための能力」ですかね。
こう表現すると両方の能力をバランスよく向上させる必要があることがわかります。

では非認知能力にはどういった種類があるのか次の章で見ていきましょう。

どんな非認知能力があるのか

本書に記述されている非認知能力は以下の15個です。

  1. 誠実性
  2. グリット
  3. 自己制御・自己コントロール
  4. 好奇心
  5. 批判的思考
  6. 楽観性
  7. 時間的展望
  8. 情動知能
  9. 感情調整
  10. 共感性
  11. 自尊感情
  12. セルフ・コンパッション
  13. マインドフルネス
  14. レジリエンス
  15. エゴ・レジリエンス


聞いたことのある言葉から全くなじみのない言葉もあると思います。すべて記述するとなると1回のコラムでは終わらないのでとりあえず独断と偏見でいくつか抽出して記述したいと思います。

グリット ~困難な目標への情熱と粘り強さ~

グリットとは, 副題にもあるように「困難な目標に対してどれだけ粘り強く取り組めるか」といった非認知特性になります。
人生において必ず困難な目標に取り組まなければならないのかと言えばそうではないと思いますが, 何かを成し遂げたいと思った時にはあるとよい能力ですね。

伸ばすためにはどうすればいいのかというところですが, 現代ではまだ十分な知見は蓄積されていないものの, 有望だとする方法が2つあり, それは1結果に基づくアプローチ, 2自分らしさに基づくアプローチです。

1結果に基づくアプローチでは, 目標達成したときに得られる結果の「価値」と「期待」に介入する方法です。目標達成時の結果に「価値」がないと感じれば当然すぐ取り組みをやめてしまいますし, 目標達成できる見込みが「期待」できなければすぐに取り組みをやめてしまいます。

そのため子どもたちには, 「今やっている課題は自分の将来に役立つ=価値がある」と教えることが必要ですし, 「努力や工夫することで能力を伸ばしていける=目標達成できると期待できる」と伝えていくことが必要です。

しかし, 著者曰くこの介入の効果は数か月で消えてしまうので, 定期的に誰かがリマインドする必要があると述べています。

2自分らしさに基づくアプローチは, 「頑張り屋」という自分の一側面を強く意識させる方法です。

人は自分のアイデンティティに合うように行動することを好むため, 「困難な時でも頑張るのが自分らしい」という気持ちを育むことができれば, 実際に困難な課題にぶつかった際も折れずに行動することができるかもしれないと著者は語っています。

読者の皆さんは自分にどんなアイデンティティがあると思いますか?自分にとって望ましいアイデンティティがあるのならそれを意識するようにするのもいいかもしれません。

たまたまですが, 当塾にはグリットについて詳しく書かれた「GRIT(グリット)~やり抜く力~著アンジェラ・ダックワース」という本があるので是非お読みください。

セルフ・コンパッション ~自分自身を受け入れて優しい気持ちを向ける力~

セルフ・コンパッションとは, 失敗や傷ついた経験のあとに, 自分の感情をバランスよく受け入れ自分に優しい気持ちを向けることです。日本語では「自分への思いやり」と表現することが多いです。

この特性が高いほど抑うつや不安, 怒りなどの程度は低くなり幸福度が高まることが研究から明らかになっています。
また学業成績を直接高めることはないものの学業に関する動機付けを高めたり, 先延ばし行動を弱める力もあることが報告されているようです。前回の私のコラムでは先延ばしについて取り上げましたが, まさかセルフ・コンパッションにも先延ばしを弱める力があったのは意外でしたね。

ではこのセルフ・コンパッションを高めるためにはどうしたらいのでしょうか。本書に記載されているのは以下の4つの手法でした。

  1. 呼吸のマインドフルネス瞑想→呼吸に集中する瞑想
  2. 慈悲の瞑想→自分や親しい人の健康を願いながらの瞑想
  3. セルフ・コンパッション・ブレイク→今自分が困っていることをイメージし自分に優しい言葉をかける
  4. セルフ・コンパッション・レター→困っている自分に対し, 友人に優しいことばをかけるように自分に手紙を書く。


生きていれば誰しも困難な状況になることがあると思いますが, そんなとき自分を責めてばかりいても心の健康に悪いことはなんとなく体験的に理解できます。
セルフ・コンパッションのような非認知能力が育まれていれば困難な状況になっても乗り越えることができるかもしれません。

これもたまたまですが, 当塾には「セルフ・コンパッション~あるがままの自分を受け入れる~著クリスティーン・ネフ」という本が置いてあるので是非お読みください。

なぜ非認知能力を育むのか

コラム冒頭でも述べましたが, 当塾では非認知能力についても重視しております。

なぜ重視しているのかと言いますと, それは非認知能力の高さが学力に良い影響があるということと, 「汎用性」が高い能力であると言えるからです。

今日のコラムではグリットとセルフ・コンパッションという2つの非認知能力を取り上げました。この2つの能力が直接学力を高めるわけではありませんが, 間接的に学力を高めることを手助けしていることがわかると思います(他の非認知能力にも似たような作用があります)。

また「汎用性が高い」と表現したのは, 生活の様々な部分で非認知能力を活かすことができるからです。例えば「高い学力」を持っていても勉強する場面以外ではあまり役に立ちませんが, 非認知能力は人生のあらゆる場面で活用できる力であると言えます。

現代は人生100年時代と呼ばれており, 学校に通う期間つまり学力が必要とされる時間は意外と少なく, 人生においては非認知能力が必要な場面が多いかもしれません。

こうした理由から当塾では学力以外の力も意識的に大切にしていきたいと思っています。私たちの塾に少しでも関心を持って下さった方はぜひお問い合わせください。


参考文献

小塩真司(2021) 「非認知能力 概念・測定と教育の可能性」北大路書房

アンジェラ・ダックワース(2016) 「GRIT(やり抜く力)」 ダイヤモンド社

クリスティーン・ネフ(2014) 「セルフ・コンパッション~あるがままの自分を受け入れる」 金剛出版 など




紹介者:尾崎

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