選書紹介 『目的への抵抗』/ 國分功一郎

今週のでこぼこ選書は


『目的への抵抗』 / 國分功一郎



「目的」、あるいは「人間の自由」に関する哲学的な思索を堪能できる一冊です。


本書の著書であられる國分先生、自分を含め、当塾スタッフにもファンが多い作家さんであります。

大学三回生の頃に読んだ國分先生の著書『暇と退屈の倫理学』は、「哲学」の面白さを教えてくれた、個人的にも思い入れのある一冊です。


数日前、本屋で平積みになっている本書をたまたま見かけたのですが、

その『暇と退屈の倫理学』の議論を深化させた本ということで、もう買うしかありませんでした…。

今作も國分ワールド全開で、非常に読み応えがありました。

本書の概要

本書は大きく分けると2部構成、さらに細かく分けると4部構成になっています。

第1部は、アガンベンという哲学者の論考を参照しながら、コロナ禍における「私権制限」「自由」、また「行政権の問題」「哲学の役割とは何か」といったような、政治的・倫理的なテーマについて論じられた講演、「新型コロナウイルス感染症対策から考える行政権力の問題」に加筆修正を加えたものです。

そして第2部は、その講演を聴いていた学生からの質問に國分先生が答える「質疑応答」のパートとなっています。

なお本公演、なんと「東大TV」チャンネルにて無料公開されています。よっ!太っ腹!


また第3部は、コロナ禍に一気に普及した「不要不急」というワードを議論のきっかけにし、「目的」という概念への批判的かつ「極端」な考察を試みた特別講話「不要不急と民主主義 ――目的、手段、遊び」に、おそらく加筆修正を加えたものです。

第4部は、こちらも第3部の講話を聴いていた学生からの質問に國分先生が答える「質疑応答」パートとなっています。

こうして書くと、やや堅めのテーマが続いているように映る気もしますが、タイムリーな話題かつ学生を対象とした講演が元になっているため、砕けた口調で終始読みやすかったです。


本書の結論を自分なりに、超簡潔にまとめてみるならば、


人間は何かをするに当たり、ある「目的」を設定する。

人間社会から「目的」概念が無くなることはないし、また無くなるべきだとも思わない。

しかし「目的」という概念はその性質上、どんな「手段」をも正当化する恐れがある。
また現代は、「目的」や「必要」を超え出ることを戒める時代である。

けれども人間は、「目的」からはみ出る、「必要性」を超え出る行為を図ることができる(≒「遊び」)。

そこにこそ「人間の自由」が、そして人間らしく生きる「喜び」と「楽しみ」が存するのだ。



といった感じでしょうか。

(まだかなり抽象的ではありますが、こうした結論に至るまでの「過程」が、本書の面白ポイントであるとも言えると思います。)


本書もまさに、講演・講話開始当初の「目的」に収まることなく、

様々な「寄り道」をしながら、上述の結論に向かった「過程」が展開されていきます。

そうした展開のおかげもあり、読む前には思いもしなかったような、様々な考えるヒントに出会うことができたような気もします。


まだ出版されて間もない本ですので、詳細な内容の紹介は控えたいと思うのですが、

本筋に触れない範囲で、個人的にアツかったポイントをご紹介してみたいと思います(國分先生すみません)。


人はパンがなければ生きていけない。しかし、パンだけで生きるべきでもない。

私たちはパンだけでなく、バラももとめよう。生きることはバラで飾られねばならない。

『暇と退屈の倫理学』國分功一郎、新潮文庫、2021年、33頁。


問い続け、考え続けること

個人的には、本筋の内容もさることながら、國分先生の真摯な受け答え、そして時には優しくも鋭い指摘が冴えわたる「質疑応答」パートが非常に面白かったです。

その中でも印象に残ったのは、國分先生が単純な物の見方、例えば「悪の親玉」みたいなものを立てる思考を退けている点です。

広く一般に社会事象・社会問題は、様々な要因が複雑に絡み合って生じたものであり、

その「原因」をある特定の「何か」・「何者か」に還元することは本来難しいはずです。


にも関わらず、ついどこかに明確な「原因」を、そして明確な「悪者」がある・いると考えてしまう。

でもそれは一種の「思考停止」であり、実際には一つ一つの事象を具体的に検討することが必要になる、
そして紋切り型の思考から距離を取り、問い続け、考え続けることが大切になると國分先生は語ります。

まさに哲学者!といった力強いお言葉ですね。

(じつはこのことは、自分が大学院生のころ、担当教員の方にご指摘をいただいたことでもあります。読んでてなんだか大変な研究生活を思い出しました…。)


例えば、「自己責任論」「ポピュリズム」「新自由主義」などといった諸概念は、「悪の親玉」として認定されやすい気がしますね。(自分もやってたような…。)

使いやすいキラーワードである反面、こうしたワードを用いた指摘や批判が適切か否かは、個別具体的に検証が必要であって、こうしたものこそすべての元凶だ!みたいな言説には少し注意が必要なのかも。

ひょっとすると「目的への抵抗」に加えて、「原因への抵抗」(?)も大切になるかもしれませんネ(ΦωΦ)フフフ…。

『暇倫』とのツーショ

おわりに

やや長くなりましたが、本日はこの辺りまでとさせていただきます。

いつも情熱的に、そして読者に寄り添いながら考えるヒントをくれる國分先生。

今回の著作からも、多くのものを受け取らせていただきました。

先に紹介した『暇と退屈の倫理学』も当コラムにて、そのうち誰かが紹介するやもしれません(ΦωΦ)フフフ…。

最後にはなりましたが、『暇と退屈の倫理学』を読まれた方、コロナ禍における「自由」のあり方に疑問を感じた方、そして広く「哲学」に関心のある方にオススメの一冊です。ぜひご一読ください。






紹介者:吉田



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